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南海トラフ巨大地震に関する研究成果『Nature Communications』に掲載


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南海トラフ巨大地震の震源域における力の状態の推定~本学教員の成果が『Nature Communications』に掲載~

日本社会だけではなく、国際社会にも大きな影響を与える南海トラフ地震は、マグニチュード(M)9の2011年東北地方太平洋沖地震のようなプレート境界で発生する巨大地震です。もしプレート間の固着の状態や力のかかり具合を推定できれば、地震発生に至る過程の進行状況を知ることができるでしょう。

本学グローバル地域センター地震予知部門総括の楠城一嘉特任准教授と静岡大学防災総合センターの吉田明夫客員教授の研究グループは、地震活動から南海トラフ沿いのプレート境界における力の状態を推定することに成功しました。次の南海トラフ巨大地震の発生が迫っているかどうかを評価する手法の基礎となる、地震防災上、重要な研究です。詳細は下部の「本研究のポイント」をご参照ください。

本研究の成果は、Nature関連誌の総合科学ジャーナル『Nature Communications』※1(2 Year Impact Factor: 12.124、5 Year Impact Factor: 13.092)に3月16日(日本時間19時00分)付けで掲載されました。

本研究はJSPS科研費 (JP17K18958)の助成を受けたものです。

掲載された論文

K. Z. Nanjo and A. Yoshida (2018) A b map implying the first eastern rupture of the Nankai Trough earthquakes, Nature Communications, DOI: 10.1038/s41467-018-03514-3
論文のページ>
(別ウィンドウで『Nature Communications 』のウェブページが開きます)

本研究のポイント

  • 巨大地震の発生にかかる力を表す「差応力」と逆相関する「b値」という指標を用いて地震活動を解析した結果、1944年東南海地震と1946年南海地震の際に大きく滑った領域でb値は低く、その中間の領域でb値は高いことが分かりました。このことから、力の状態は空間的に均質ではなく、南海トラフの東西に大きな「差応力」領域があると考えられます。
  • b値は、海底地殻変動のデータなどから推定されるプレート間の固着状態の指標(専門的には、すべり欠損速度と呼ばれる指標。年間でどの程度陸側のプレートが海洋プレートに引きずり込まれているかを示す値)と相関関係があることが分かりました。固着が強い(滑り欠損速度が大きい)領域で、差応力が大きい(b値が小さい)という結果は、世界の他の地震発生地域における観測事実とも調和的です。
  • 南海トラフを東西で分けた時、東側の固着の強い領域の方が、西側の同様な領域よりもb値が低い(差応力が大きい)ことが分かりました。この結果は、南海トラフ沿いの東側が西側よりも先に破壊される傾向にあることを示唆しており、過去の南海トラフ沿い巨大地震の発生の特徴と整合します。
  • 本研究から、南海トラフ沿いでの地震発生の切迫性を評価できる可能性が出てきました。従って、この研究は、次の南海トラフ巨大地震の発生に備える上で、防災上、重要な研究です。

南海トラフ沿いのb値の空間分布

南海トラフ沿いのb値の空間分布
フィリピン海プレート内の地震とプレート境界の地震(両方とも2006年以降)を使用してb値の空間分布を作成した。点線の領域は想定東海地震の震源域。1946年南海地震と1944年東南海地震の滑り量が2m以上の領域を実線、破線は4m以上の領域を破線で示す。灰色の点は低周波地震、星は2009年駿河湾の地震と2016年三重県南東沖の地震(共にM6.5)。赤色の細線はプレート境界の等深度線。詳細は本論文を参照。

※1Nature Communications は、生物学、物理学、化学および地球科学のあらゆる領域における高品質な研究を出版するオープンアクセスジャーナルです。Nature Communicationsに掲載される論文は、各分野の専門家にとって非常に意義のある重要な進歩を示したものです。

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