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『Nature』に掲載 - 日本人特有の白血病発症メカニズムの解明へ


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DNA データから癌化と細胞老化につながる現象の解明

薬学部ゲノム病態解析講座の寺尾知可史 特任教授(理化学研究所生命医科学研究センター ゲノム解析応用研究チーム チームリーダー、静岡県立総合病院 臨床研究部免疫研究部長)らの国際共同研究グループは、血中でクローン性に増殖する白血球のDNA構造変異分布を同定し、その臨床的意義を解明しました。 本研究成果は、超早期の癌や老化現象のスクリーニングやハイリスク群抽出に向けた、がんや老化のメカニズム解明につながると期待できます。

明確に病気を持っていなくても、DNAの変化が起こった白血球が血中に増殖する(変化が起こった細胞と起こっていない細胞のモザイク状態になる)ことがあり、将来の癌や死亡リスクが上昇することがこれまでの研究から知られるようになってきました。今回研究グループは、バイオバンク?ジャパン(BBJ)の登録者約18万人のDNAマイクロアレイのデータを解析しました。その結果、約3.3万のモザイクを同定しました。モザイク保有割合は特に高齢者で高く、加齢に伴いほぼ不可避であることが示唆されました。また、日本人に多いタイプの白血病や、日本人に少なくヨーロッパ人で最も多い慢性リンパ球性白血病をはじめとした血液悪性腫瘍の人種差を反映する変化が疾患発症前のモザイクの段階から先行して起こっていることが明らかとなりました。また、後天的な変異があるモザイクと強く関連する生まれながらの遺伝子多型を同定し、それらの一部は日本人特異的でした。さらに関連遺伝子から、この現象に関わるカギとなる分子機構(DNA二重鎖切断の修復タンパク複合体)も同定しました。さらに、モザイクは将来の総死亡率の上昇に関わっていること、特に白血病死亡に強く関わっていることが明らかとなりました。

本研究成果は、加齢に伴う染色体変化やがんの発生機構の解明に向けた基礎医学とモザイク発生を予測する臨床医学の進歩に貢献すると期待できます。また、DNAマイクロアレイデータは、全世界で数百万人以上の規模で存在し、これまでそのシグナル情報は生まれつきの変異の同定にのみに使われてきました。今回、このデータには後天的な染色体変化の情報が含まれていることが明確になり、そのメカニズムの一端を解明できました。今後、既に利用可能なこれらのシグナル情報を集約させることによって、日本人に特有な機構を含む詳細なモザイクの機構が解明され、老化やがん化のメカニズムの解明につながると期待できます。

本研究は、イギリスの科学雑誌『Nature』の掲載に先立ち、オンライン版(6月24日付け:日本時間6月25日)に掲載されました。

日本人特異的体細胞モザイク(左)と加齢に伴う体細胞モザイク保有割合の上昇(右)

論文情報

<タイトル>
Chromosomal alterations among age-related hematopoietic clones in Japan.

<著者>
Terao C, Suzuki A, Momozawa Y, Akiyama M, Ishigaki K, Yamamoto K, Matsuda K,
Murakami Y, McCarroll SA, Kubo M, Loh PR, Kamatani Y.

<論文掲載ページ>
https://www.nature.com/articles/s41586-020-2426-2(外部サイトへリンク)



(2020年6月25日)

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