核酸医薬品は生体内に存在するRNAに直接作用し薬効を発揮する、次世代医薬品の一つです。核酸医薬品の開発は世界的にも精力的に行われており、日本においても承認される医薬品が増えています。一方で、原薬のオリゴ核酸は一般的には化学的に合成されていますが、高品質なオリゴ核酸の大量合成には課題があり、新たな生産技術の開発が求められています。
食品栄養科学部の本山智晴博士 (足球365比分_365体育投注-直播*官网4年3月博士後期課程修了)、伊藤創平准教授および中野祥吾准教授の研究グループは、味の素のバイオ?ファイン研究所の梶本祥平研究員、萩原佑介主任研究員らとの共同研究で、高機能な人工RNA連結酵素*1 (AncT4_2) を祖先型設計法で開発することに成功しました。AncT4_2は天然型RNA連結酵素 (T4Rnl2) と比べて熱安定性が高く、かつゼノ核酸*2を含むRNAフラグメントに対する連結活性が優れていることが判明しました。そこで4つのRNAフラグメント (ゼノ核酸を含む) を反応基質としてRNAi治療薬の一つであるパチシラン*3の合成を行ったところ、T4Rnl2を使った反応では24時間の反応で収率20%までしか進みませんでしたが、AncT4_2を使うと同条件で反応収率80%まで向上し、核酸医薬の酵素合成に適した性質であることが確認できました。
反応基質として用いたRNAフラグメントは、味の素社で開発されたAJIPHASE?技術*4を用いて大量かつ高純度での生産が可能です (図1)。本成果は核酸医薬品の高効率?高純度での大量生産を可能にする技術の一つとして産業応用が期待されています (図1)。本成果はアメリカ微生物学会が発行する『Applied and Environmental Microbiology』誌にて発表されました。
食品栄養科学部の本山智晴博士 (足球365比分_365体育投注-直播*官网4年3月博士後期課程修了)、伊藤創平准教授および中野祥吾准教授の研究グループは、味の素のバイオ?ファイン研究所の梶本祥平研究員、萩原佑介主任研究員らとの共同研究で、高機能な人工RNA連結酵素*1 (AncT4_2) を祖先型設計法で開発することに成功しました。AncT4_2は天然型RNA連結酵素 (T4Rnl2) と比べて熱安定性が高く、かつゼノ核酸*2を含むRNAフラグメントに対する連結活性が優れていることが判明しました。そこで4つのRNAフラグメント (ゼノ核酸を含む) を反応基質としてRNAi治療薬の一つであるパチシラン*3の合成を行ったところ、T4Rnl2を使った反応では24時間の反応で収率20%までしか進みませんでしたが、AncT4_2を使うと同条件で反応収率80%まで向上し、核酸医薬の酵素合成に適した性質であることが確認できました。
反応基質として用いたRNAフラグメントは、味の素社で開発されたAJIPHASE?技術*4を用いて大量かつ高純度での生産が可能です (図1)。本成果は核酸医薬品の高効率?高純度での大量生産を可能にする技術の一つとして産業応用が期待されています (図1)。本成果はアメリカ微生物学会が発行する『Applied and Environmental Microbiology』誌にて発表されました。
特記事項
本研究において、祖先型RNA連結酵素 (AncT4_2) のデザインは静岡県立大学の研究チームが、AncT4_2の実験解析とRNAフラグメントの連結実験は味の素株式会社の研究チームが担当しました。
図1. 本研究の概要。
本研究においてデザインした祖先型RNA連結酵素 (AncT4_2) を用いて、RNAフラグメントの高効率な連結反応を達成した。
本研究においてデザインした祖先型RNA連結酵素 (AncT4_2) を用いて、RNAフラグメントの高効率な連結反応を達成した。
論文情報
掲載誌: Applied and Environmental Microbiology, 88(23), e0167922 , (2022)
タイトル: Enzymatic Conjugation of Modified RNA Fragments by Ancestral RNA Ligase AncT4_2
著者名: Shohei Kajimoto, Miwa Ohashi, Yusuke Hagiwara, Daisuke Takahashi, Yasuhiro Mihara, Tomoharu Motoyama, Sohei Ito, Shogo Nakano
DOI: 10.1128/aem.01679-22(クリックすると出版社サイトへ移動します)
タイトル: Enzymatic Conjugation of Modified RNA Fragments by Ancestral RNA Ligase AncT4_2
著者名: Shohei Kajimoto, Miwa Ohashi, Yusuke Hagiwara, Daisuke Takahashi, Yasuhiro Mihara, Tomoharu Motoyama, Sohei Ito, Shogo Nakano
DOI: 10.1128/aem.01679-22(クリックすると出版社サイトへ移動します)
用語の説明
*1…RNA連結酵素: RNAの分子間あるいは分子内の連結反応を触媒する酵素。アデノシン3-リン酸 (ATP) を補酵素として用いる。
*2…ゼノ核酸: 天然の核酸であるDNAやRNAとは異なる糖構造を有する核酸アナログを指す。図1に示した通り、Xの部位が2’-OMeや2’-Fなどに置換されたアナログを含む。
*3…パチシラン: 日本で初めて承認されたRNAi治療薬。トランスサイレンチン型家族性アミロイドポリニューロパチーの治療に用いられる。
*4…AJIPHASE?技術: 味の素社が開発したオリゴ核酸?ペプチドの液相合成技術。一般的な固相合成に比べて反応性が高く、スケールアップが容易であるといった利点がある。
*2…ゼノ核酸: 天然の核酸であるDNAやRNAとは異なる糖構造を有する核酸アナログを指す。図1に示した通り、Xの部位が2’-OMeや2’-Fなどに置換されたアナログを含む。
*3…パチシラン: 日本で初めて承認されたRNAi治療薬。トランスサイレンチン型家族性アミロイドポリニューロパチーの治療に用いられる。
*4…AJIPHASE?技術: 味の素社が開発したオリゴ核酸?ペプチドの液相合成技術。一般的な固相合成に比べて反応性が高く、スケールアップが容易であるといった利点がある。