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植物の種子の寿命を決めるタンパク質の発見 ー高品質な種子の開発に貢献ー


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食品栄養科学部環境生命科学科の田村謙太郎(准教授)、大石歩(研究当時学部4年生)、中川志都美(実験等補助員)らの研究グループは、植物の種子の寿命に関与する「Nup50」タンパク質を発見しました。この発見はイギリスの科学雑紙『Journal of Experimental Botany』の電子版に発表されました。この研究成果は、種子を高寿命化するための重要な技術基盤となり、今後、種子の長期間保存時のコスト削減を目指すことで、種苗産業への応用展開が期待されます。

概要

農作物の種子の発芽能力を長期間維持することは農業上の重要な課題です。植物の種子には寿命があり、酸化や温度といった環境ストレスによって、時間と共に発芽率が徐々に低下していきます。種子の寿命は植物種によって異なっていることが分かっており、種子の寿命を長期間維持するには、厳密な相対湿度と温度の管理が必要です。このため現場では多額の設備コストを費やして種子を保存しているのが現状です。一方で、植物はどのような分子機構で種子寿命を維持しているのかについては不明な点が多く残されていました。

研究グループはシロイヌナズナを用いて実験を行い、核膜孔タンパク質である「Nup50」が種子の寿命維持に関与していることを発見しました。

「Nup50」が欠損している変異体(「nup50a nup50b変異体」と命名)では種子寿命が低下し、発芽率が下がることがわかりました(図1)。全発現遺伝子を網羅的に解析したところ、「Nup50」は種子の細胞壁合成に関与する遺伝子群の発現制御を担っている可能性が示唆されました。細胞壁は外界からの環境ストレスから内部の細胞を守る重要なバリアーとして働くことが分かっています。研究グループはさらに、「Nup50」が種子にとって外部からの塩ストレスに対する耐性にも必要なことを明らかにしました。これらの結果から、植物は「Nup50」を用いて、特定遺伝子群の発現を通じて種子のバリアー機能を高めることで、寿命を維持していることが明らかになりました。


「Nup50」がどのように特定遺伝子群の発現を制御するかについては不明な点が多く、今後の研究課題です。発芽率を長期間維持できる高寿命な種子の作出は、農業分野における重要な技術開発の一つです。この研究成果が高品質な種子の創出につながることが期待できます。

図1

原著論文情報

論文名: Nucleoporin 50 proteins affect longevity and salinity stress tolerance in seeds. 
著者名: Ayumi Oishi, Shitomi Nakgawa, Kentaro Tamura
雑紙名: Journal of Experimental Botany
DOI:10.1093/jxb/erad396
公表日: 2023年10月18日(水曜日)(オンライン公開)
(掲載URL:https://doi.org/10.1093/jxb/erad396

研究助成

本研究はHuman Frontier Science Program RGP0009/2018、JSPS科学研究費基盤研究(C) JP22K06269、学術変革領域研究 (A) JP23J04205の助成を受けたものです。


(2023年10月18日)

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